【受賞結果発表】NEXT by Pen クリエイター・アワード「ポスターデザイン部門」

イベント概要

これからのクリエイターに光を当てるプロジェクト、「NEXT by Penクリエイター・アワード2023」(以下、NEXT)。「ポスターデザイン」部門の「最優秀賞」および「優秀賞」受賞作品をここに発表する。

最優秀賞>オウ アンキ(学生

作者コメント
主人公の演奏シーンを対称的な構図で配置し、鏡に映った実体と虚像のように、南と博が対照的でありながらも一体である関係を表現しました。全体の明るさを抑え、昭和の夜のクラブの雰囲気を再現しています。テキストの配置によって視線の流れをスムーズに誘導し、主人公に集中させました。グリッドシステムを使用し、テキストと画像の位置関係に空間感を持たせました。ポスターは平面のメディアですが、演奏現場に身を置いているかのように、流れる音楽と時空が交錯する感覚を味わっていただければと思います。

石井勇一さん講評
独自の表現として、本作の魅力がバランス良く香り立っている作品。妖艶な世界から浮かび上がる人物像を軽快に表現する写真の良さを生かした構図と、空間を生かした大胆な文字のあしらい方が、全体の緊張感を上手に演出している。さぞかし繊細な美意識を持っているのだと感じました。タイトルデザインの五線譜を見事に捉えた着想と、細かい気の配り方にも好感がもてます。機能性という面から言えば、とても小さくて読めないキャストクレジットなど、実際の現場では修正が必ず入ってしまうものですが、可読性などを超越したグラフィック表現ならではのアプローチがあっても良いのだろうと期待を込めたい作品。前回のワークショップを踏まえて、一人の表現からメインビジュアルを意識した二人の人物像にトライしてもらった今回の作品ですが、応募段階の作品でもティーザービジュアルとして機能出来るものだと思いました。まだまだ若い作者さんなので、今後創作されていく世界観を楽しみにしています。

優秀賞&特別賞>桑原拓巳(グラフィックデザイナー

作者コメント
2人の主人公、「南」と「博」が同一人物であることをどう魅せるかが重要でした。彼がジャズプレイヤーとしてピアノに向き合う、場所も時間も思念も違うその姿たちを、「えぇい、一画面にまとめてしまえ!」と構成したのがこのポスターです。(キュビズム風といえば大袈裟でしょうか……)

<優秀賞>小橋可奈子(グラフィックデザイナー

作者コメント
私はこの映画を、ピアニストとしての信念と妥協の葛藤、一般的には人間の理想と現実の葛藤を描いた人生ドラマと捉えました。この主題をポスターに表すために、主人公の人生の二つの時間軸を重ね合わせ、音楽への情熱と諦念を地続きで見せることで、悩み苦しみ生きる人間存在が色濃く見えるようなイメージを制作しました。

<優秀賞>大脇初枝(グラフィックデザイナー・アートディレクター

作者コメント
劇中で「ゴッドファーザー愛のテーマ」は、人と人を繋ぎ、過去と現在、ひいては原作と映画を繋ぐ重要なキーワードとなっています。原作の一節を引用し、この曲にまつわる記述を「黒塗り」のように写真で隠し「タブー」として扱いました。この映画やジャズの持つ危険な雰囲気、夜の銀座の妖しい魅力を表現したデザインです。

<優秀賞>小泉 彩香里(学生

作者コメント
葛藤や焦燥を抱える主人公と演奏シーンを重ねることで南、博の人生の中にある光と影、他との交わりによる奥行きを表現しました。文字デザインにおいても作品のもつ不安定さや夜の深淵に落ちていく雰囲気を反映させました。映画ポスターの役割を考え、ストーリー以上に空気感や情緒が伝わるようなデザインを目指しました。

石井勇一さん総評
たくさんのご応募ありがとうございました。全体の作品の印象としては、自由に柔軟な発想でトライしていただいた作品も多く、楽しんでつくられた様子がこちらにも伝わってきて、とても嬉しかったです。その上で評価の視点をお伝えすると、観た上で伝えたい本作の作品性や感情があるとして、具体的に表現する方法や手段が突き詰められていなく、どこか迷っている印象の作品が多かったと思います。映画ポスターの要素としては、写真の選定、トリミング、色合い、加工処理、視覚誘導、タイトルロゴ、文字要素の書体選定などがあり、それぞれを本作ならではのオリジナリティやアイディアと調和させ、紙面に落とし込む必要があります。それらが伴ったご褒美として、受け手に対してなにかしらの感情の1/10程度でも共有出来れば良いものです。その割合を少しでも上げるためには、表現の引き出しがとにかく必要で、日頃からどういった形や表現に対して自分の感情が動くのかをまず知る必要があります。それらを体験として重ねることで、ミリ単位の写真トリミングから、微細な形や空間バランス一つで変化する、繊細な感情の差を判別できる様になるのです。20年経った自分もいまでも変わらず行っているように、とにかく数を作って、満足いく印象になるまで決しておごらず客観的に比較分析し、自己研磨し続けるしかありません。

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